pingコマンドとは
ping(ピング)コマンドは、ICMPの応答を使い、接続先への到達性や往復時間を確認するコマンドです。pingは一般にツール名として扱われ、正式名称を短くした頭字語ではありません。
宛先へ小さなEcho Request(エコー・リクエスト)を送り、相手からEcho Reply(エコー・リプライ)が戻るまでを測ります。結果は、その時点にICMPの往復が成立したかを示します。
pingが成功して分かるのは、指定したIPアドレスとのICMP往復が成立したことです。Webサイト、特定ポート、ログイン、通信速度が正常だとまでは言えません。

実行から結果までを六段階で読む
ホスト名なら先にDNSなどでIPアドレスへ解決します。IPを直接指定すれば名前解決を切り離せます。
識別子、通し番号、確認用データなどを含むメッセージを宛先へ送ります。
IPパケットとして経路を進みます。各ルーターでTTLまたはHop Limitが減ります。
要求を受け付ける設定なら、対応する通し番号とデータを含む応答を返します。
送ってから応答を受けるまでを送信元の時計で測り、通常はミリ秒で表示します。
複数回の送信後に損失率、最小・最大・平均時間などを表示します。項目はOSで異なります。
ホスト名を指定すると名前解決も含まれる
ping example.comのように名前を指定すると、送信前にDNSなどからIPアドレスを得ます。「ホストが見つからない」なら、ICMPを送る前の名前解決で止まった可能性があります。
同じ接続先のIPアドレスを直接指定して応答し、名前では失敗するなら、DNS設定、検索ドメイン、名前の綴りなどを調べます。ただし、大規模サイトは複数のIPアドレス、CDN、IPv4・IPv6を使うため、適当なIPを固定すると通常のアクセスと違う接続先になる場合があります。
IPv4とIPv6ではICMPの版が違う
IPv4ではICMP Echo 要求・Echo 応答、IPv6ではICMPv6 Echo 要求・Echo 応答を使います。目的は似ていますが、メッセージ形式とプロトコルは別です。名前にAとAAAAの両方がある場合、OSの選択によってどちらを試すかが変わります。
一方だけを試したいときは、利用中のOSのヘルプでIPv4またはIPv6を指定するオプションを確認します。オプションの記号や既定の送信回数はWindows、macOS、Linuxで異なるため、別OSの例をそのまま入力しないようにします。
応答時間は往復の合計
RTTはRound-Trip Time(ラウンド・トリップ・タイム)の略で、要求を送ってから返答を受けるまでの往復時間です。片道の遅延を二倍した値と常に一致するわけではなく、往路と復路が別経路を通ることもあります。
一回だけ短くても安定しているとは限りません。複数回の最小、最大、平均、ばらつき、損失を見ると、一時的な混雑や無線品質の変動を見つけやすくなります。ping自体のパケットは小さいため、大容量転送時の速度や遅延を再現する試験ではありません。
応答なしは原因を一つに決められない
時間内にEcho 応答を受け取れない場合、宛先停止、経路断、パケット損失、ファイアウォール、ICMPの優先度低下、応答回数制限、誤ったアドレスなど複数の原因があります。安全対策としてpingへ応答しないサーバーもあります。
そのため「ping失敗=相手が停止」とは断定できません。逆にping成功でも、WebサーバーのTCP 443番ポートやアプリケーションが停止している場合があります。確認したい機能に合わせ、HTTPアクセス、DNS照会、ポート接続、アプリのログなどを組み合わせます。
到達不能は途中の機器が返すこともある
Destination Unreachable(デスティネーション・アンリーチャブル)は、宛先ホストだけでなく途中のルーターが「転送先がない」「規則で通せない」などの理由で返す場合があります。メッセージを返したIPアドレスと種別を見ます。
「要求がタイムアウトしました」は、明示的なエラー応答も届かなかった状態です。無応答と到達不能では観測できたことが違いますが、表示文や細分化はOSとICMPの版で異なります。
TTLとHop Limitから総中継数は断定できない
IPv4のTTLはTime To Live(タイム・トゥ・リブ)、IPv6のHop Limit(ホップ・リミット)は、ルーターを通るたびに減る上限値です。ゼロになると転送を止め、ループし続けることを防ぎます。
ping結果に表示される値は、返答パケットに残っている値です。相手OSの初期値が分からず、復路も往路と同じとは限らないため、その値だけから正確な総ホップ数を決められません。経路上の中継点を調べる目的にはtracerouteまたはtracertを使います。
調べたい対象ごとに道具を変える
家庭内の切り分けでは、自分のループバック、LAN内のルーター、外部のIPアドレス、外部のホスト名の順に試すと、TCP/IP機能、LAN、インターネット到達、名前解決を段階的に見られます。ただし各装置がICMPに応答する設定であることが前提です。
通過経路はtraceroute、名前解決はnslookupやdig、Webの状態はブラウザやcurl、特定TCPポートは接続試験、実用帯域は速度測定を使います。pingの結果を他の検査の代わりにせず、最初の小さな観測として位置付けます。
pingはICMP Echoの往復を観測する道具です。成功はその往復の成立、時間は往復時間、無応答は複数原因の可能性を示します。Webやポート、速度まで正常と結論づけず、目的に合う次の検査へつなげます。
Windows版pingの構文、IPv4・IPv6、応答時間、TTL、エラー表示:Microsoft Learn「ping」、IPv4 ICMP Echoの定義:RFC 792「Internet Control Message Protocol」、ICMPv6 Echoの定義:RFC 4443「ICMPv6」