ジッターとは
ジッターは、パケットごとの遅延時間がどれくらい変動しているかを示す値です。通信測定ではpacket delay variation(パケット・ディレイ・バリエーション、パケット遅延変動)という、より意味を限定した表現も使います。
たとえば各パケットの一方向遅延が20、21、60、19 msなら、平均付近へそろわず一個だけ大きく遅れています。平均遅延が同じでも、20、30、20、30 msの列とは再生への影響が異なります。
ジッターは「遅延が大きいこと」ではなく「遅延がそろわないこと」です。測定ツールごとに計算式が違うため、数値だけを比較しません。

送信から再生までを、時間の列として追う
- 送信一定周期で作る
音声フレームなどをタイムスタンプ付きパケットとして順に送る
- 変動待ち時間がばらつく
キュー、無線再送、経路変化、OS処理で到着間隔が変わる
- 収容バッファーへ一時保存
少し待って遅いパケットを受け、番号と時刻で再生順へ並べる
- 期限再生時刻を判定
期限までに来ないパケットは、後で届いても再生へ使えないことがある
- 補償音や映像の欠けを隠す
前後から推定、無音化、キーフレーム要求など用途別に処理する
「ジッター」の計算式は一つではない
RFC 3393のIPパケット遅延variationは、選んだ二パケットの一方向遅延の差として定義します。どのパケット対を選ぶか、符号を残すか絶対値にするか、平均・百分位を使うかで報告値が変わります。
RTP/RTCPでは、送信タイムスタンプと到着間隔から平滑化したinterarrivalジッターを更新します。速度テストの「ジッター」がRTCPと同じ式とは限りません。測定方式、単位、方向、サンプル間隔、集計式を確認してから比較します。
高い平均遅延と高いジッターは、別の症状である
すべてのパケットがほぼ100 msで届けば、遅延は高くても変動は小さい状態です。多くが20 msで一部だけ150 msなら、平均は低めでもリアルタイム再生に厳しい変動があります。
音声会話では高い固定遅延は会話の重なりを生み、高い変動は音切れを生みます。用途評価では遅延、ジッター、損失を三つ並べます。
再生バッファーを増やすと途切れにくいが、会話は遅れる
受信側が最初に多めに待てば、遅く到着したパケットを再生順へ戻せます。しかし待った分だけエンドツーエンド遅延が増え、通話では返答タイミングが悪くなります。
小さすぎるバッファーは遅着パケットを捨て、大きすぎるバッファーは操作遅延を増やします。適応型バッファーは最近の変動、欠落率、音声区間を見ながら目標遅延を調整します。
キュー、無線再送、経路・処理の変化が間隔を乱す
混雑したルーターのキューは、その時点の先行パケット数で待ち時間が変わります。Wi‑Fiでは競合待ちとリンク層再送、モバイルでは電波状態とスケジューリング、端末では省電力復帰やCPU負荷が変動を作ります。
ロードバランスで経路が変わる、VPNや中継サーバーが切り替わる、映像フレームが一時的に大きくなる場合もあります。平均帯域不足だけに原因を限定しません。
短い平均値でなく、時間系列と連続した遅着を見る
同じ平均ジッターでも、変動が一個ずつ散る場合と数秒連続する場合では体験が違います。連続した遅着はバッファーを使い切り、映像停止や音声欠落をまとめて起こします。
送信・受信タイムスタンプ、シーケンス番号、バッファー深さ、遅着廃棄、損失を同じ時間軸で記録し、無線信号や回線負荷の変化と照合します。
測定定義の確認資料:RFC 3393「IP Packet Delay Variation Metric」、RFC 5481「Packet Delay Variation Applicability」、RFC 3550「RTP」