レイテンシとは
レイテンシは、データを送ってから相手へ届く、または応答が戻るまでに生じる時間的な遅れです。英語はlatency(レイテンシー)で、通信では通常ms(millisecond/ミリセカンド、千分の一秒)で表します。
送信元から宛先までを測るone-way delay(一方向遅延)と、応答が戻るまでのRTT(Round-Trip Time/ラウンドトリップ・タイム、往復時間)は別の量です。測定画面がどちらを示すか確認します。
レイテンシは一本の線の長さだけで決まらず、信号の伝搬、パケットを線へ出す時間、機器の処理、混雑時の順番待ちを合計した結果です。

遅れを四つの成分に分ける
- 伝搬信号が媒体を進む時間
距離と媒体中の伝搬速度で決まり、回線を太くしてもゼロにはならない
- 伝送パケットを線へ送り出す時間
パケットのビット数÷リンクレート。低速リンクや大きなパケットほど長い
- 処理装置・ソフトが判断する時間
ルーティング、暗号、NAT、検査、OS、アプリ処理などが加わる
- 待ち送信キューで順番を待つ時間
負荷が容量へ近づくと変動し、長いバッファーでは大幅に増える
一方向遅延には、両端の時計同期が必要である
一方向遅延は送信時刻と宛先到着時刻の差なので、二台の時計が共通時刻へ十分に同期していなければ誤差が入ります。時計が5 msずれていれば、数msの経路差を正しく比較できません。
RTTは一台の時計で送信から応答受信までを測れるため扱いやすい一方、宛先が応答を作る時間と復路も含みます。測定名、開始点・終了点、片道・往復、時計同期精度を結果と一緒に残す必要があります。
帯域幅を増やしても、距離による伝搬時間は短くならない
1 Gbpsは同じ時間に多くのビットを送れますが、遠隔地まで信号が進む物理時間は別です。東京から遠い地域のサーバーは、十分な帯域があっても近隣サーバーより基礎RTTが大きくなります。
ただし低速リンクでは大きなパケットの伝送時間が目立ち、容量不足でキューも伸びます。回線増速が伝送・待ち時間を短くすることはあります。「帯域幅とレイテンシは無関係」ではなく、構成要素が異なるという整理です。
Web表示には、複数の待ち時間が直列に並ぶ
URLを開くと、DNS名前解決、TCPまたはQUIC接続、TLS認証、HTTP要求、サーバー処理、最初の応答、追加リソース取得が続きます。各段階の往復回数と処理時間が合計されます。
pingのRTTが小さくても、DNSやアプリ処理が遅ければ画面は待ちます。ブラウザー開発者ツールではDNS、接続、TTFB、ダウンロードを分け、サーバー側ではキュー・DB・外部APIを追います。
アイドル時と負荷時のレイテンシを分ける
通信量が少ないときの最小RTTは、伝搬と基礎処理へ近い値です。大きなアップロードやダウンロード中にRTTが急増するなら、出口キューが埋まるbufferbloatや無線の競合・再送が疑われます。
速度テストと同時に小さな測定パケットを送り、無負荷・下り負荷・上り負荷のRTTを比べます。家庭では上り容量が小さく、アップロード時だけ応答が重くなることがあります。
平均だけでなく、最小値・中央値・上位百分位を見る
レイテンシは時間とともに分布します。平均値は少数の極端な遅れに引かれ、最小値は混雑を隠します。中央値、95th パーセンタイルなどの上位百分位、最大値、測定回数を並べると安定性が分かります。
リアルタイム用途では、平均が低くても周期的な大遅延が操作や音声を壊すため、時間系列とジッター・損失を同時に確認します。別時刻・別経路の結果を条件なしに混ぜません。
測定定義の確認資料:RFC 7679「A One-Way Delay Metric」、RFC 2681「A Round-trip Delay Metric」、RFC 5136「Defining Network Capacity」