WPSとは
WPSは、ボタンやPINでWi-Fi設定を簡略化する仕組みですが、利用方法によっては安全上の注意が必要です。正式名称はWi‑Fi Protected Setup(ワイファイ・プロテクテッド・セットアップ)、読み方はダブリューピーエスです。
AP側のRegistrar(レジストラー/登録機)が、追加するEnrollee(エンローリー/参加機)を確認し、SSIDや暗号設定などの資格情報を安全に渡します。利用者が長いWi‑Fiパスフレーズを機器へ直接入力しにくい場合に使われます。
WPSは端末を初期登録する仕組みで、登録後の通常データを暗号化する方式ではありません。通信の保護はWPA2やWPA3が担当します。

PBCは、ボタンを押した短い時間だけ参加を受け付ける
APと参加機で操作し、登録時間窓が重なった一台を受け入れる。周囲に別の登録要求がないか確認する
表示・印刷された数字をレジストラーへ入力するか、APのPINを参加機から提示する
受け取った資格情報を保存し、以後はWPSではなく設定されたWPA方式で接続する
PIN方式は検証の分かれ方が、総当たりを容易にした
初期WPSのPIN方式では、8桁相当の値の最後がチェック用で、残りも前半と後半に分けて正誤を応答する設計でした。攻撃者は全体を一度に当てる必要がなく、前半が正しいかを確定してから後半へ進めます。
このため、WPS PINを外部から繰り返し試せる機器は総当たり攻撃を受けやすくなりました。試行回数制限やロックを実装した製品もありますが、固定PINを常時有効にする必要がなければ無効化します。
ボタン方式も、押した人だけを自動識別するわけではない
PBCはPIN総当たりの問題を避けやすい一方、登録受付中に周囲の別端末が参加を試みる可能性があります。登録する機器をAPの近くへ置き、周囲に不審な端末がない状態で開始し、完了後に接続端末一覧を確認します。
受付時間を開いたままにせず、不要ならWPS機能自体をオフにします。ルーターのボタンが無線オン・オフなど別機能と兼用されることもあるため、長押し時間を製品説明で確認します。
WPSを無効にしても、登録済み端末は通常そのまま使える
WPSは資格情報を端末へ渡す入口です。登録完了後、端末は保存したSSIDとWPA設定で接続します。そのためWPS受付を無効にしても、すでに登録した端末の通常接続まで無効になるとは限りません。
WPSを切る操作と、Wi‑Fiパスフレーズを変更して既存端末を切断する操作は別です。不審な端末が参加した疑いがあるなら、WPS停止だけでなくパスフレーズ変更と端末一覧確認を行います。
画面やカメラを使える機器には、別の登録方式もある
Wi‑Fi Easy Connectは、DPP(Device Provisioning Protocol/デバイス・プロビジョニング・プロトコル)を使い、QRコードなどの公開鍵情報から機器を登録します。固定WPS PINの共有とは異なる暗号学的な仕組みです。
ただし対応機器と設定アプリが必要です。古いゲストネットワーク用端末などでWPSしか使えない場合は、PBCを必要時だけ有効にし、登録後に停止します。
安全性の確認資料:NIST IR 8235「Security Guidance for First Responder Mobile and Wearable Devices」、Wi‑Fi Alliance「Wi‑Fi Easy Connect」