tracertとは
tracert(トレースルート)は、宛先までに通過するルーターを調べるWindowsのコマンドです。IPv4のTTLまたはIPv6のHop Limitを1から順に増やしたICMP Echo試験通信を送り、途中のルーターが返すTime Exceededを並べます。
Windowsの出力は、ホップ番号、通常3回分の往復時間、応答したルーターインターフェースのホスト名とIPアドレスを一行に表示します。宛先からEcho 応答を受けるか、最大ホップ数へ達すると終了します。
tracertはWindowsの経路追跡ツールです。Unix系のtracerouteと目的は似ていますが、既定試験通信と選択肢記法が違うため、解説例を混ぜて入力しません。

表示までの六段階
名前ならDNSでアドレスへ解決し、IPv4またはIPv6のトレースを開始します。
最初はTTL・Hop Limitを1にし、宛先へ向けて送信します。
ゼロになったルーターがパケットを破棄し、Time Exceededを送信元へ返します。
応答ごとに送信から受信までのRTTをmillisecondで表示します。
一段先のルーターまで試験通信を進め、同じ観測を繰り返します。
宛先応答または指定した最大ホップ数への到達でトレースを終えます。
tracerouteとの違いはOS名だけではない
WindowsのtracertはICMP Echoを使います。Unix系のtracerouteは実装によってUDPを既定にし、ICMP・TCPを選択肢で選べます。そのため同じ宛先でも、ファイアウォールや負荷分散装置が試験通信を違って扱い、表示結果が一致しない場合があります。
Windowsは/d、/h、/w、/4、/6のような記法です。Unix系でよく見る-nや-mをそのまま使わず、tracert /?でそのWindows版の案内を確認します。
基本出力はアドレスと3回のRTT
中央の三列は送信元からその応答インターフェースまでの往復時間です。<1 msはゼロではなく、表示単位より短いことを表します。三回の差が大きい場合はキュー制御、無線の変動、ICMP処理優先度、経路変化などを候補にします。
末尾はルーターのIPアドレスで、逆引きが成功すればホスト名も表示されます。ホスト名は運用者の命名情報であり、物理的な所在地や所有関係を証明しません。
/dは経路探索を変えず名前変換を省く
tracert /d 宛先は途中アドレスをホスト名へ変換しないため、DNS応答待ちを省き、数値アドレスとRTTを早く確認しやすくなります。試験通信のTTL・Hop Limit探索自体を短縮する選択肢ではありません。
名前付きで遅く、/dではすぐ表示されるなら、経路障害ではなく逆引きDNSの待ちが混ざっている可能性があります。先に数値で経路を採り、必要なアドレスだけ後から調べます。
星印とタイムアウトを障害断定に使わない
指定時間内にTime ExceededまたはEcho 応答が戻らなければ、その試験通信は*になります。ルーターが通知しない、ICMPを制限する、返答だけが失われる、フィルターされるなど原因は一つではありません。
該当行の後に宛先まで表示されるなら、そのルーターは通過パケットを転送しています。星印が始まり宛先まで終わらない場合も、宛先がEchoへ応答しないだけかもしれず、HTTPSや特定ポートの接続を別に確認します。
経路は測定時点の片方向の観測
経路制御変更、ECMP負荷分散、モバイル回線の出口変更などにより、実行ごと・試験通信ごとにアドレスが変わります。tracertの三試験通信が異なる流れとして扱われる装置では、同じホップに複数アドレスが出る場合があります。
応答パケットの復路は試験通信の往路と同じとは限りません。各RTTへ往路と復路の両方が含まれます。ホップ間の値を引いて区間遅延を断定せず、継続する傾向を見ます。
pingとpathpingの役割を分ける
pingは一つの宛先とのICMP往復を繰り返し、tracertは上限を変えて途中の応答点を並べます。Windowsのpathpingは経路探索後に各ホップへ追加測定を行い、損失や遅延の統計を得る別ツールです。
Webの問題なら、tracertで経路の手掛かりを得ても、DNS、TCP、TLS、HTTP、アプリケーションを別に確認します。tracert成功はWebサービスの正常を保証しません。
tracertはWindowsがICMP EchoのTTL・Hop Limitを増やして行う経路観測です。三回のRTT、数値表示、タイムアウトを読みつつ、Unix系tracerouteの構文や試験通信方式と混同せず使います。
Windows tracertのICMP Echo、TTL増加、3回のRTT、既定最大hop、各option:Microsoft Learn「tracert」