用語辞典・速度・品質

QoS

QoSとは

QoSは、通信の種類に応じて優先度や帯域を制御し、必要な品質を確保する仕組みです。正式名称はQuality of Service(クオリティ・オブ・サービス)で、キューオーエスと読みます。

「通信を速くする一つの機能名」ではなく、分類、マーキング、帯域配分、キュー制御、スケジューリング、シェーピング、ポリシング、監視などを組み合わせる設計全体を指します。

QoSは混雑していない回線へ魔法の容量を追加しません。資源が不足するとき、どの通信をどれだけ早く・多く・確実に扱うかを決めます。

音声・映像・操作・大容量転送を分類し、別キューから共有出口へ配分する低遅延通信を先に出しながら、一括通信通信にも公平な送信機会を残す
通話、映像、Web操作、クラウドファイルの四色トラフィックが分類器を通り、色別の四つのキューへ入り、時計付きスケジューラーから一つの共有出力へ比率を調整して送られるQoSの図解
図1図の色と配分は概念例です。実際の分類規則と送信比率は、用途要件と回線能力に合わせて設計します。

入口から出口までを、一つの処理列として設計する

識別、計測、印付け、整形、待ち行列、送出を順に追うDSCPだけ設定して終わらず、各装置の実際のPHBへ結び付ける
  1. 分類
    対象トラフィックを識別

    アドレス、ポート、VLAN、アプリ、利用者などからクラスへ分ける

  2. 計測
    プロファイル内か判定

    比率と突発的な集中を計測器で測り、契約・方針の範囲内外を判断する

  3. 印付
    DSCP等をマーク

    ネットワーク内で選びたい各中継点の動作へ対応する値を付ける

  4. 整形
    流入をプロファイルへ合わせる

    シェーピングで待たせる、ポリシングで廃棄・再マーキングするなどを選ぶ

  5. 待列
    クラス別キューへ収容

    遅延感度、廃棄優先度、突発的な集中特性に合わせてバッファーを管理する

  6. 送出
    スケジューラーで配分

    優先度、重み付き公平、最低・最大比率などから次を選ぶ

図2入口と出口、上りと下りは別の処理です。反対方向のQoSが自動で対称になるとは限りません。

Classificationは「何者か」、マーキングは「どう扱ってほしいか」を示す

分類はパケットを方針上のクラスへ分けます。マーキングはその結果をDSCP、802.1p優先度などのフィールドへ記録します。暗号化通信では中身のアプリ種類を見られないため、端末・VLAN・宛先など別の条件を使います。

マークは希望を示すだけで、各装置が同じ意味へ設定されていなければ動作しません。どこで分類し、どこまでマークを信頼し、どの待ち行列へ対応表するかを端から端まで図にする必要があります。

DSCPは動作そのものではなく、PHBを選ぶコードポイントである

DSCP(Differentiated Services Code Point/ディファレンシエイテッド・サービシズ・コード・ポイント)はIPヘッダーのDSフィールド内にあり、装置ごとのPHB(Per-Hop Behavior/パー・ホップ・ビヘイビアー)を選びます。

EF、AFなどのPHBは転送特性を定めますが、実際のサービスは境界でのトラフィックプロファイル、容量割当、複数ホップの実装を合わせて成立します。「値が大きいほど最優先」という単純な順番ではありません。

Strict優先度は低遅延に強いが、使いすぎると他クラスを止める

厳格優先度待ち行列は対象パケットがある限り先に送るため、少量で一定比率の音声へ有効です。しかし誤分類や攻撃で優先度トラフィックが増えると、通常待ち行列が送れない資源枯渇を起こします。

優先度クラスへ上限比率を設け、残りはweighted fair queueing(ウェイテッド・フェア・キューイング/重み付き公平キューイング)などで最低配分を持たせます。遅延目標と帯域目標を分け、全クラスの最悪時の挙動を試験します。

Trust境界で、利用者が自由に付けた高優先マークを検証する

端末が自分のパケットを最優先へマークできると、誰でも資源を多く奪えます。ネットワーク入口で送信元・認証・VLAN・契約プロファイルを確認し、許可したマークだけ保持します。

不正・未定義マークは既定へ戻す、別クラスへ再マーキングする、プロファイル超過を速度超過を制限するなどの境界方針を設けます。QoS設定自体がサービス妨害の入口にならないよう監査します。

Wi‑Fiのアクセス分類と有線DSCPは、対応付けが必要である

Wi‑Fi MultimediaではVoice、Video、Best Effort、Backgroundなどのアクセス分類が異なる競合パラメーターを持ちます。IPのDSCPが自動で期待どおりの無線分類へ移るとは限りません。

AP、コントローラー、端末、スイッチのDSCP-to-UP対応付けと再マーキング規則を確認します。高優先分類も無線干渉や低PHY比率を消せず、過剰マークは電波時間の公平性を壊します。

家庭内QoSは、公開インターネット全体の保証ではない

自宅ルーターは自宅のWAN出口待ち行列を制御できますが、事業者網、ピアリング、相手サーバーの待ち行列までは支配できません。途中でDSCPが消去・変更されることもあります。

QoSの有効範囲、分類精度、各クラスの比率・遅延・損失、混雑時の公平性を測り、保証する区間はSLAと運用境界で明示します。設定画面の「ゲーム優先」だけで効果を断定しません。

仕様の確認資料:RFC 2475「Differentiated Services Architecture」RFC 3260「Diffserv Terminology and Clarifications」RFC 8325「Mapping Diffserv to IEEE 802.11」

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