PoEとは
PoEは、イーサネットケーブルでデータと電力を同時に供給する技術です。正式名称はPower over Ethernet(パワー・オーバー・イーサネット)で、ピーオーイーと読みます。アクセスポイント、IPカメラ、IP電話などを一本のLAN配線で接続できます。
電力を送る側をPSE(Power Sourcing Equipment/パワー・ソーシング・イクイップメント)、受ける側をPD(Powered Device/パワード・デバイス)と呼びます。PoEスイッチはエンドスパンPSE、途中へ置くインジェクターはミッドスパンPSEの一種です。
標準PoEは、LAN端子へ最初から大きな電圧を掛けるのではなく、相手が対応PDかを検出し、必要電力を確認してから給電する仕組みです。非対応機器を守り、電力を管理するための手順があります。

検出、分類、給電、維持の順に進む
PSEが低い検査電圧で規定抵抗を確認し、対応PDと判断する
物理分類やLLDPで電力クラス・要求を交換し、予算を割り当てる
極性を考慮し、二対または四対からPDへ直流電力を送る
PDが接続を維持しているシグネチャーを確認し、外れたら給電を止める
短絡、過負荷、温度異常などを検出し、ポートを停止・再試行する
Type 1からType 4へ、利用できる電力と使用ペアが拡張された
代表的なPSEポート出力上限はType 1が15.4W、Type 2が30W、Type 3が60W、Type 4が90Wです。ケーブル損失があるためPD側で利用できる保証値はこれより小さく、順に12.95W、25.5W、51W、71.3Wが代表値です。
Type 1・2は二対給電、Type 3は機器クラスにより二対または四対、Type 4は四対給電を使います。製品の「PoE+」「PoE++」という名称だけでなく、IEEE Type、Class、ポート上限、全体予算を確認します。
スイッチ全体の電力予算は、全ポート最大値の合計より小さいことがある
各ポートが高出力に対応しても、内蔵電源が全ポートへ同時に最大出力できるとは限りません。PSEはpower budget(パワー・バジェット/電力予算)から各PDへ割り当て、足りなければ低優先ポートを停止する場合があります。
PDの通常消費と起動時ピーク、将来増設を合計し、余裕を持たせます。冗長電源を一台外したときに予算が減るスイッチでは、故障時の給電継続条件も確認します。
ケーブル抵抗による電圧低下と発熱は、電流が増えるほど大きくなる
長い、導体が細い、接触抵抗が高い、束ねた本数が多い、高温環境という条件は電圧低下と発熱を増やします。四対給電は電流を分散できますが、高出力では配線設計がより重要です。
LANケーブルの導体径・温度定格・カテゴリー、コネクター、パッチパネル、束の大きさを確認します。CCAなど抵抗の高い材料や不完全な圧着を避けます。リンクが通ることと、安全に必要電力を連続供給できることを別々に検査します。
インジェクターとスプリッターは、PSE・PD機能を途中へ追加する
PoE非対応スイッチのデータと電源アダプターの電力をまとめるのがPoEインジェクターです。出力側はPSEとして検出・分類できる標準対応品を選びます。多数ポートへ追加するものはミッドスパンと呼ばれます。
PoEスプリッターはPDとして電力を受け、Ethernetデータと機器用DC出力へ分けます。出力電圧、極性、プラグ、最大電流が接続機器へ合う必要があります。USB‑C PDとPoEの「PD」は同じ略字でも別規格です。
パッシブPoEは、標準PoEの安全な検出を行わない
一部製品のpassive PoE(パッシブ・ピーオーイー)は、特定ピンへ固定電圧を常時出します。IEEE 802.3 PoEの検出・分類とは別で、電圧、極性、ピン、機器が完全に一致しないと故障させるおそれがあります。
「PoE対応」という表示だけで混在させず、IEEE規格対応か、Type/Class、入力電圧を両端で照合します。標準PSEへ非対応端末をつなぐのは通常安全ですが、無条件給電機器ではそうとは限りません。
仕様の確認資料:IEEE 802.3‑2022「Ethernet」、IEEE 802.3bt‑2018「Power over Ethernet over 4 pairs」