ウイルスとは
コンピューターウイルスは、他のファイルやプログラムへ感染して増殖し、不正な処理を行うマルウェアです。一般には短くvirus(ウイルス)と呼びます。
自分のコードを実行ファイル、文書のマクロ、起動領域などのhost(ホスト、宿主)へ組み込み、その宿主が実行されたときに活動・複製します。
ウイルスの分類で重要なのは、悪い動作の種類だけではなく「別の宿主へ感染して複製を増やす」仕組みです。

感染とペイロードは別の働き
- Entry添付、ダウンロード、共有メディア、侵害された配布物などから感染済み宿主が入る。
- Activation利用者やOSが宿主ファイル・マクロ・起動コードを実行し、ウイルスコードも動き始める。
- Replication同じ端末や共有場所にある別の宿主へ自身の複製を組み込む。
- Payloadデータ破壊、情報窃取、別マルウェア導入など、感染以外の目的を実行する。
- Propagation感染した宿主がメール、共有フォルダー、USBなどで別端末へ運ばれる。
ウイルスは単独では活動できない
NISTの定義では、ウイルスは他のプログラムの一部となる複製を挿入し、ホストプログラムが実行されて初めて活動します。独立したプログラムとしてネットワークへ自動複製するワームとの中心的な違いです。
ただし現実の攻撃は複数機能を組み合わせます。ファイル感染機能を持ちながらネットワークへ自律拡散するblendedマルウェアもあるため、製品の検知名だけで境界を断定しません。
感染対象により動きが変わる
ファイルinfectorは実行ファイルなどへコードを加えます。マクロウイルスは文書のマクロ機能を利用し、文書を開いてマクロが許可されたときに活動します。boot-sectorウイルスは起動処理に関わる領域へ感染します。
感染対象が違えば、起動契機、必要権限、検査場所、復旧方法も違います。拡張子だけを見ず、実際のファイル形式、署名、マクロ、起動設定を確認します。
「開いただけ」の意味を正確にする
単にメール一覧へ表示したのか、プレビューしたのか、添付を保存したのか、開いてマクロを許可したのかで実行範囲が異なります。脆弱性があればプレビューだけでコード実行される場合もあるため、日時と操作、製品バージョンを記録します。
疑わしいファイルを確認目的で再度開きません。ハッシュと検知名、取得元、隔離先をセキュリティ担当へ渡します。
検知名はウイルスそのものの正式名とは限らない
セキュリティ製品の表示には、系列、挙動、heuristic、感染対象、検出エンジン独自の記号が混ざります。別製品が同じ検体を違う名前で呼ぶ場合があります。
検知名、ファイルパス、ハッシュ、署名者、作成・変更時刻、親処理を揃え、同じホスト内の別ファイルと他端末へ範囲を広げます。
隔離と削除は目的が違う
quarantine(クオランティン、隔離)は、検体を実行・参照されにくい管理領域へ移し、調査や復元判断を可能にします。削除はファイルを取り除きますが、感染前の正常ファイルを自動で戻すとは限りません。
ウイルスコードだけを除くdisinfectionが可能な場合もありますが、元ファイルが改変・破損していれば、信頼できるバックアップや正規インストーラーから置き換える方が確実です。
同じ感染源を閉じる
端末を清浄化しても、共有フォルダー、USB、メールボックス、ソフトウェア配布元に感染宿主が残れば再感染します。書込可能な共有、autorun、マクロ方針、古いアプリケーションの脆弱性を調べます。
OSとアプリケーションを更新し、一般作業を標準利用者で行い、実行ファイル・マクロの許可リスト、メールゲートウェイ、エンドポイント保護を組み合わせます。
復旧後に正常性を確認する
重要システムでは、感染時点、変更されたファイル、実行されたアカウント、外部通信、資格情報窃取の有無を調査します。確信できなければ信頼済み画像から再構築し、パスワードとトークンを安全な端末から変更します。
ウイルス対応では、見つかった一ファイルだけでなく、感染した宿主がどこから来て、どの宿主へ複製され、何が実行されたかを追います。
virusの定義とmalware対応の確認資料:NIST CSRC Glossary「Virus」、NIST SP 800-83 Rev. 1「Guide to Malware Incident Prevention and Handling for Desktops and Laptops」