アンテナとは
アンテナは、電波を電気信号へ、または電気信号を電波へ変換して送受信する部品です。英語表記はantenna(アンテナ)です。送信では導体へ流れる高周波電流から電磁界を空間へ放射し、受信では到来した電磁界が導体に生じさせる電圧・電流を無線回路へ渡します。
多くのアンテナは、送信でよく放射する方向からの電波を受信でも捉えやすいreciprocity(レシプロシティ/相反性)を持ちます。同じ一本を送受信で切り替えて使えるのは、この性質を利用するためです。
アンテナは電波を「作る増幅器」ではなく、無線回路の電気エネルギーと空間を進む電磁波を結び付け、方向・偏波・周波数ごとに受け渡す変換器です。

アンテナの性能は、方向、周波数、偏波、整合を一組で見る
どの方向へどれだけ放射・受信するかを立体的に表す。全方向が同じとは限らない
基準アンテナに比べ特定方向へ集中する度合い。送信電力そのものを増幅する値ではない
電界の向き。送受信の偏波が直交すると大きな損失が生じる
整合と放射特性を保てる範囲。2.4GHz用が6GHzでも同じ性能とは限らない
無線回路、給電線、アンテナの条件を合わせ、反射して戻る電力を抑える
同軸ケーブルの長さ・細さ・周波数で損失が増え、端子の緩みも反射を生む
大きさは波長と関係し、同じ形を全帯域で使えるとは限らない
電波の波長は周波数が高いほど短くなります。ダイポールやモノポールは、利用する波長の一定割合を基準に寸法を設計します。2.4GHz帯、5GHz帯、6GHz帯では波長が違うため、内部アンテナの素子や整合回路も複数帯域に合わせて作ります。
短い外観でも、基板パターンを折り返す、複数の共振部を組み合わせるなどして必要な電気長を作れます。反対に外部ロッドが長くても、内部の有効素子が全長とは限りません。
利得はエネルギーを特定方向へ配る性質である
等方的に全方向へ同じ強さで放射する仮想アンテナを基準にした利得がdBiです。高利得アンテナは新しい電力を生むのではなく、ある方向を強くする代わりに別方向を弱くします。
家庭用APの垂直アンテナは水平方向へ広く、真上・真下が弱いことがあります。階をまたいで届けたい場合、一本を倒すだけでなく、AP位置、建物構造、複数AP配置を含めて調整します。
偏波と設置位置が合わないと、十分な信号を使えない
直線偏波アンテナ同士は、導体の向きがそろうと電波を受けやすくなります。片方を90度回すと理想条件では大きな偏波損失が生じます。室内では壁や家具の反射で偏波が混ざるため完全には消えませんが、向きの影響は残ります。
金属製PCの背面、配電盤の内部、床際、人体のすぐ後ろは電波を遮蔽・吸収・反射します。アンテナを金属から離し、開けた場所へ置き、相手との向きと高さを変えて実測します。同軸延長が長すぎると、位置改善より給電損失が大きくなることもあります。
複数アンテナは、空間ストリームと受信の安定化に使う
MIMOは異なる空間経路を利用し、複数のデータ系列を同時に送るspatial multiplexing(スペーシャル・マルチプレクシング/空間多重)や、受信しやすい経路を組み合わせるダイバーシティを行います。
「アンテナ4本」が常に4ストリームを意味するわけではありません。帯域ごとの送受信チェーン、端末側ストリーム数、配置間隔、チャネル状態で決まります。アンテナ端子を未接続にしたまま送信すると、性能低下や機器への負担につながるため指定どおり接続します。
交換アンテナは、端子だけでなく法令上の組み合わせを確認する
送信機の出力とアンテナ利得を組み合わせた実効放射電力には地域ごとの制限があります。認証が特定アンテナ種別・利得を前提にしている製品もあり、高利得品へ自由に替えてよいとは限りません。
端子形状、オス・メス、逆極性、インピーダンス、対応周波数、最大入力を照合します。似たコネクターを無理に締めず、機器メーカーが認めるアンテナを使用します。
仕様・伝搬の確認資料:IEEE 802.11‑2024「Wireless LAN MAC and PHY Specifications」、ITU‑R P.525「Calculation of free-space attenuation」